イジワル外科医の熱愛ロマンス
「ゆ、祐と同じ部屋なんて、落ち着かない。気を紛らわせる為に決まってるじゃないですか!」


ムキになって言い返した途端、ふんと鼻で笑われた。


「落ち着かないのは、この一晩で俺になにかされるかもって、妄想してるからだろ」

「なっ……」


顎を上げ、斜に構えて自信満々に言いのける祐に、私は思わず絶句した。


「されることを期待して、意識が全部俺の方に向く。平常心を保つには、気を紛らわせなきゃいけない。そういうことだろ」

「なに、言って……」


あまりの言われように、頭の中は真っ白だった。
強い口調で完全否定したいのに、まともな言葉が口からなにも出て来ない。
そんな私を、祐はニヤリとほくそ笑んだ。


「断言してやる」


祐は膝立ちになって両手を壁に突いた。
私を見下ろす祐の影が、頭上から降りてくる。


「お前、木山先生の前では絶対にそんな顔しない。いや……できっこない」


私は彼の言葉に導かれるように、顔を上げた。


「そんな、顔、って……」

「無自覚か。艶っぽい……男を誘う顔」

「……っ!?」

「妄想して戸惑って、期待して胸を弾ませて。そういう、恋する女の顔だよ」


信じがたい言葉を聞いて、私はギョッとして言葉を喉に詰まらせた。
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