イジワル外科医の熱愛ロマンス
「っ、ゆた……」


息苦しさすら感じる中、私は祐の名を呼んだ。
再び私に覆い被さり、体重を預けてくる彼を止めなきゃ。
そう思うのが精一杯で、思考回路はまったく働かない、けれど……。


「どっ、どうしてっ……!」


顔を背けてキスから逃げ、私の胸を弄る祐の手を必死に掴み、声を振り絞った。


「最初に私を拒んだのは、あなたの方じゃないですか! なのにっ……!」

「っ、え?」


私の声を耳に留めてくれたのか、祐がピタリと行動を止める。
その機を逃さず、私は叫んだ。


「なのに、なんで今更っ! 『俺のもの』なんて言わないでください!!」


声の最後は、涙交じりだった。
祐は困惑した表情を浮かべ、ゆっくりと身体を起こした。


「今更、って」

「わ、私のことなんか、これっぽっちも好きじゃないくせに」


そう言って、私は大きく顔を背けた。
祐は黙って私を見下ろしている。


「自分から逃げ出した婚約者だから。そのせいで屈辱的な思いをしたから。そうやって復讐して懐柔したら、あなたはそれで満足して、そして飽きるんでしょう……!?」


乱されたバスローブを両手で掻き集め、私はそう捲し立てた。
込み上げてきた涙で声が詰まり、ヒクッとしゃくり上げてしまう。


「飽きねえよ」


その隙を突くかのように、祐が静かに言葉を挟んだ。
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