イジワル外科医の熱愛ロマンス
おかげで私の勢いは削がれ、言葉を失いゴクンと唾を飲んだ。
祐は私をジッと見下ろしたまま、静かに唇を開く。


「懐柔して満足なわけないだろ。お前を手に入れたら、もう二度と離したりしない。今まで我慢してきた分も全部取り返す。……一生かかったって、満足する日なんか来ねえんだよ」

「っ……え?」


予想外の……いや、まったく意味不明で、理解しがたい言葉。


「いったい……あなたはなにが言いたいんですか。私を手に入れたら、って、どういう……」


私は戸惑って何度も瞬きをした。
彼は私から目を逸らし、肩を動かして息を吐く。


「俺はお前のことずっと好きだった」

「……え?」


私の上で、祐が顔を伏せた。
少し生乾きの前髪が、私の視界でサラッと揺れる。


「雫が……俺との婚約を承諾したって聞いた時、俺だって『どうして』って思ったよ。けど、それ以上に嬉しかった。なのに」


言われたことはちゃんと耳で捉えたのに、その意味がよくわからない。
私は祐の次の言葉を待って、無意識に喉を鳴らしていた。


「拒まれた上に逃げられて……今度捕まえたら、もう絶対に逃がさない。ずっとそう思ってたんだ。満足なんかしない。……できるもんか」


祐は苛立ちを隠すかのようにガシガシと髪を掻き毟り、大きな溜め息をついて身体を起こした。
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