イジワル外科医の熱愛ロマンス
「なんのことだよ。俺が先に拒んだって。いったい、俺がいつ……」


祐は固く目を閉じ、一度ブルッと頭を振った。
そして呆然としたままの私の腕を掴んで、ちょっと乱暴に引っ張り上げる。


「ひゃっ……」

「悪い。なんか、気が削がれた」


祐は私から顔を背けて、不機嫌に素っ気なくそう言った。


「……頭、冷やしてくる」


祐がベッドから降りると、彼に覆い尽くされていた視界に光が射した。
私の視界に、室内の風景がやけに現実的に映り込む。


「ど、どこに……」


強張った身体が、ブリキのおもちゃみたいに軋む。
それでもなんとか身体を動かし、ベッドサイドに腰かけ、床に足を着いた。


祐は自分のベッドの方に歩いて行く途中で、躊躇うことなくバスローブを脱ぎ捨てた。
否応なく晒された、祐の広い裸の背中にドキッとして、慌てて大きく俯く。


「お前は先に寝てろ」


素っ気ない声と一緒に、衣擦れの音が聞こえる。
部屋を出る為に着替えているんだろう。
やがて床を踏む足音が耳に届き、私はハッとして顔を上げた。


「ゆ、祐」


やっとの思いで呼びかけた時、彼は私のベッドの足元をスッと横切り、ドアに向かって行ってしまった。


「あ……」


私はそれ以上呼び止められないまま、ドアが開いて再び閉まる音を聞くだけだった。
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