イジワル外科医の熱愛ロマンス
ベッドにペッタリと座ったまま、私はぼんやりと天井を仰いだ。
頭の中は真っ白。
いったいなにが起きたのか、なんで祐が出て行ったのか、上手く説明できないくらい思考回路が働かない。


なのに心臓は、怖いくらいドキドキと拍動していた。
身体中、あらゆるところで血管が脈打っていて、すぐ耳元でもドクドクいってるのが聞こえる。


血の巡りがいいせいか、身体は火照って熱い。
だというのに自分でギュッと抱き締めた身体は、体幹からゾクッと震え上がる。
身体の奥底で、なにかがきゅうっと疼くのを感じて、私は身体を折り曲げるようにして堪えた。


固くギュッと目を閉じると、目蓋の裏に祐の顔が浮かび上がる。


あんな切なげな目をする祐を、初めて見た。
私の言葉に本気で困惑した表情、あれは前にも見たことがある。
そう、さっきのように祐にベッドに組み敷かれ……私が彼を拒んだ時。


「っ……」


再びゾクッと込み上げてくる痺れに、私は身体を震わせた。
祐の反応を思い返していたら、彼が言った言葉が、私の胸に津波のように押し寄せてくる。


『俺はおまえのことずっと好きだった』

『今度捕まえたら、絶対に逃がさない』

『満足なんかしない。……できるもんか』――。
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