イジワル外科医の熱愛ロマンス
さっき祐が私に向けた、感情を迸らさるような言葉に、反射的に両手で耳を塞いだ。
身体を前に倒しベッドに伏せたまま、勢いよく首を横に振る。


「なに……言ってるの。」


無意識に漏れた声は、激しい混乱で揺れていた。


「私が婚約に承諾して嬉しかっただなんて。そんなことあるわけない。なんでそんな嘘っ……!」


祐の言葉は、全部タチの悪い嘘。
こんな状況だからこそ、いつもより意地悪にからかってきただけに過ぎない。


そう、その言葉ですべの説明ができるし、納得するのも簡単なこと。
だけど、今、私にはそれができない。


だって、心が震えているのだ。
嘘だ、意地悪で言ってるだけ。
自分でそう言い聞かせても、祐が私に言った『好きだ』という言葉が、まるで胸を抉るように奥深くまで浸透していくのだ。


「ずっと、って。……本当に……?」


半信半疑で呟いた言葉に、私はもちろん答えを持ち合わせていない。


ドキドキする胸が苦しい。
心臓の拍動に呼吸が追いつかず、息苦しさすら感じる。


「信じられない。どういうこと。なんで……」


小さく身体を丸めたまま、私は振り絞った声を消え入らせた。
今すぐ、応えてほしい。
なのに祐は出て行ってしまったまま。
その夜、部屋には帰ってこなかった。
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