イジワル外科医の熱愛ロマンス
ほとんど一睡もできずに朝を迎えた。
一晩中考えたけど、やっぱり祐の言葉は全然わからない。
働かせすぎた思考回路は、靄がかかったようで、今やまったく機能してくれない。


私はのろのろと身支度を始めた。
自分と祐の分、両方の荷物をまとめて、朝九時前にホテルをチェックアウトした。


ぼんやりとロビーに向かい、ソファに深く身を沈めている祐を見つけて、無意識に足を止める。
大きく足を組み上げ、胸の前で腕組みをした格好で、祐はしっかりと目を閉じている。


周りにいる女性グループが、チラチラと視線を送っている。
それにつられて、私までその姿に見入ってしまった。
うたた寝しているだけなのに、祐は相変わらず人目を惹く。


一度荷物を持ち直し、腕時計で時間を確認した。
昨夜、チラッとでも『ここに朝九時』と言っておいて良かった。
もし約束していなかったら、あらゆる手段を使って、祐と連絡を取らなければならなかった。
私はまだ、普通の顔して仕事に集中できるほど、冷静になれてはいない。


ゆっくり深呼吸をした。
そして、意を決して祐の方に歩を進める。
一歩進むごとに緊張が強まり、胸がドキドキと騒ぎ始める。


足音が近付くのに気付いたのか、祐は私が彼の前で足を止めると同時に、ゆっくりと目を開けた。
< 191 / 249 >

この作品をシェア

pagetop