イジワル外科医の熱愛ロマンス
下から見上げられて、私の胸が一際大きな音を立てる。
おかげで、呼びかけるタイミングを完全に逸してしまった。


「おはよう」


固く唇を引き結んで目を逸らした私に、祐の方が先に声をかけてきた。


「……お、はよう、ございます」


一度ゴクッと唾をのみ、自分に発破をかけてから、なんとか挨拶を返した。
彼の視線に晒されているせいで、ますます緊張が強まり、嫌でも顔が強張ってしまう。


「祐。昨夜……どこに行ってたんですか」


思い切ってそう切り出した。
祐は黙って私を見上げた。


「ネカフェ」

「え?」

「インターネットカフェ」

「そこって……横になって休めるところですか?」


そう畳みかけると、彼は私から目を逸らして、ハッと短い息を吐いた。


「お前が泊まろうと思ってたとこだろ?」

「私の代わりに……?」


続けて訊ねると、祐はYESもNOも示さず、黙り込んでしまった。
そっぽを向いたままの彼の表情は、ピクリとも動かない。


「祐、私……」


聞かなきゃいけないことも、言いたいこともたくさんあるのに、なにからどう切り出せばいいのかわからない。
勇み足で呼びかけたはいいけど、はっきりした言葉にならないまま、声が喉に引っかかってしまった。
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