イジワル外科医の熱愛ロマンス
視察先の中京医科大学は、ホテルからタクシーで二十分ほどの距離にあった。
乗車中、祐は私との会話を拒むように、ずっと目を閉じたまま。
ホテルのロビーでうたた寝していたし、もしかしたら祐も、私と同じように昨夜眠れていないんだろうか。
いや、そもそもちゃんと横になれる場所だったんだろうか――。


GW初日の今日、窓の外は明るい日光が降り注いでいる。
絶好の行楽日和というヤツだ。
こうして車の振動に身を任せているうちに、私まで眠気に襲われてしまった。


ダメだ。今は仕事中。
居眠りなんかしちゃダメ……。


必死に睡魔と闘ったものの、隣から聞こえる祐の穏やかな寝息に引き込まれるようにして、私も目蓋の重みに抗えず、舟を漕ぎ出していた。
そして、いつの間にか完全に意識を手放していたようだ。


「雫、着いたぞ」と頭上から聞こえた声にハッとして、私は勢いよく目を開けた。
視界に映る物すべてが傾いている。
自分の視界を確認するように、パチッと瞬きをした。


周りの物がじゃなく、私の身体が傾いているのを認識して、慌てて身体を起こす。
反射的に顔を上げると、先に眠っていた祐の方は、既にしっかりと目を開けていた。
< 195 / 249 >

この作品をシェア

pagetop