イジワル外科医の熱愛ロマンス
「すっ……すみませんっ!!」


目を開けた瞬間の状況から鑑みても、睡魔に負けた私が、彼の肩に頭を預け、寄りかかって寝ていたのは誤魔化しようがない。


「私ったら……本当に、ごめんなさい!」

「別に」


祐は先ほどと同じようにシートに深く背を預け、腕組みをした姿勢で、私にチラリと横目を流した。
探るような視線を受けて恥ずかしくて堪らなくなり、私は咄嗟に身を竦ませた。
けれどすぐに我に返って、窓の外に目を遣る。


「あっ……運転手さん、すみません。正門の前で停めてください」


フロントガラスの向こうに、目的地である大学の校舎が目視できる。
私はわずかに運転席に身を乗り出して、手でバッグを探りながら声をかけた。


運転手さんが静かにブレーキを踏み、大学正門の前でハザードランプを点して車を停めてくれた。
先に祐が歩道に降り立ち、私は料金の精算をする。


領収書を受け取ってタクシーから降りると、背後でドアが閉まった。
走り去っていくタクシーを無意識に振り返ってから、私は肩を落として息をした。


「……昨夜、眠れなかったのか?」


そのタイミングで、祐がそう訊ねかけてくる。
まるで彼に応えるかのように、私の肩はビクッと震えてしまった。
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