イジワル外科医の熱愛ロマンス
医局の秘書とは言え、私には心臓外科の知識はない。
二人の会話は私の耳にも聞こえるけれど、ちんぷんかんぷんだ。
耳に拾える体外循環装置に関する専門用語は、徐々に右から左にスルーしていく。
やがて、私の歩みは無意識のうちに遅れ出し、二人との間隔が少しずつ開いていった。
動きが緩慢になったのが先か、それとも頭がボーッとしたのが先か――。
なんか、気持ちが悪い……。
下のフロアに移動する為に階段を降りていた時、踊り場の窓から射し込む紫外線の強い日光を浴びて、嫌な汗が滲むのを感じた。
眩しさに目が眩み、額に手を当てると、一瞬視界がグラッと揺れた。
「っ……」
この一週間の疲れが残った身体に、昨夜の寝不足。
のぼせたような感覚に陥る。
視界の焦点を合わせようと、一度ギュッと目を閉じた。
その途端――。
視界が真っ暗になり、前後左右の感覚が狂った。
身体が大きく揺さぶられるように、足元が覚束ない。
咄嗟に手すりを探して手を彷徨わせた。
けれど、私の手は虚しく空を切っただけ。
「あっ……」
身体のバランスが保てず、私はギュッと目を閉じた。
「雫っ……!?」
朦朧とした意識が完全に寸断される前に、どこか強張った険しい祐の声に包まれたような気がした。
二人の会話は私の耳にも聞こえるけれど、ちんぷんかんぷんだ。
耳に拾える体外循環装置に関する専門用語は、徐々に右から左にスルーしていく。
やがて、私の歩みは無意識のうちに遅れ出し、二人との間隔が少しずつ開いていった。
動きが緩慢になったのが先か、それとも頭がボーッとしたのが先か――。
なんか、気持ちが悪い……。
下のフロアに移動する為に階段を降りていた時、踊り場の窓から射し込む紫外線の強い日光を浴びて、嫌な汗が滲むのを感じた。
眩しさに目が眩み、額に手を当てると、一瞬視界がグラッと揺れた。
「っ……」
この一週間の疲れが残った身体に、昨夜の寝不足。
のぼせたような感覚に陥る。
視界の焦点を合わせようと、一度ギュッと目を閉じた。
その途端――。
視界が真っ暗になり、前後左右の感覚が狂った。
身体が大きく揺さぶられるように、足元が覚束ない。
咄嗟に手すりを探して手を彷徨わせた。
けれど、私の手は虚しく空を切っただけ。
「あっ……」
身体のバランスが保てず、私はギュッと目を閉じた。
「雫っ……!?」
朦朧とした意識が完全に寸断される前に、どこか強張った険しい祐の声に包まれたような気がした。