イジワル外科医の熱愛ロマンス
中途半端に上体を起こした私を見て、彼はわずかに眉をひそめた。


「寝てろ」


一言短くそう言うと、後ろ手でカーテンを閉めてベッドサイドに立つ。


「そういうわけには! まだ視察中……」


そう言い返してベッドから降りようとすると、祐に肩を押さえられた。
反射的にビクッと身を震わせる私の頭上で、彼が溜め息をつく。


「視察なら終わった。だいぶ日が高くなったからわからないだろうが、もう夕方だ」

「……えっ!?」


祐の言葉にギョッとして、私は思わず左手首の腕時計に視線を落とした。
確かに、時計の短針は『4』の数字を指している。


「う、嘘っ……!」


今日の視察は正午過ぎには終わる予定だった。
私たちの休日勤務は半日で、この時間、もう東京に戻っているはずだったのに。


「ごめんなさい! すぐに帰りの新幹線の手配を……!」


祐の手を払って、バッグを探そうとした。


「いいから、横になってろ。どっちにしてもその点滴終わるまで、帰れないから」


祐は有無を言わさずに、再び私の肩を強く押した。
結局私はベッドに寝かしつけられてしまう。


彼は私から手を離すと、一度カーテンの向こう側に姿を消した。
室内の電気を点けてから、再びこっちに戻ってくる。
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