イジワル外科医の熱愛ロマンス
「おい、ちょっと待て、雫」


声を絞り出すように口走る私を、祐が止めた。


「学年って……まさか、ガキの頃のことか?」


祐はどこか呆れた声で、脱力するように訊ねてくる。


「ガ、ガキって」

「どんなに思い返しても掠らないわけだ……いつだ? 小学校? 中学校?」


どこかヤケッぱちのように早口で畳みかけながら、祐はガシガシと頭を掻いた。


「ちゅう……がく……ですけど」


祐の口調にムッとしながら素直に返事をすると、彼はさっきよりもっと深い溜め息を吐いた。


「……もしかしてあれか。バスケ部の」


祐がバツが悪そうに目線を横に流すのを見て、私は思わず大きく首を縦に振った。


「そうよ! ほら、記憶にないとか、ずっととか嘘……」

「だから嘘じゃねえって。ここ最近……婚約した後のことだと思ってたんだ。ったく……まさかそんなガキの頃のこととは」


祐は早口で言ってから、観念したように溜め息をついた。


「お前が聞いたのは多分、バスケ部の仲間が俺とお前で変な妄想するのを、止めようとした時のことだ」


どこか忌々しげな祐の声に、私はゴクッと喉を鳴らしてから大きく頷いた。
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