イジワル外科医の熱愛ロマンス
ほんと、十年以上も。
いったい私、なにをしてたの。


「あの時失恋して以来、臆病になって。現実の恋愛に夢も希望も持てなくなって、人を好きになることさえ……」


腕に力を込めて、私は膝に額を預けて顔を伏せた。


バカみたい。
あまりに自分が情けなくて、呆れて、なんだか笑えてくる。


「二次元のゲームなら、もうあんな風に傷つくことはないからって。こんな年になるまで、私なにやってたの……」


笑いながら、泣けてきた。
声を尻すぼみにして肩を震わせると、祐がボソッと呟く。


「なるほど。お前の二次元逃避癖、そんな前から。しかもそれも俺のせいか」


その声に導かれてそっと顔を上げると、祐は軽く背を屈め、私の顔を覗き込んできた。
いきなりの至近距離にドキッとする私に、彼は質問を畳みかけてくる。


「なあ……。失恋、ってことは。お前、俺のこと好きだったのか?」


斜めの角度から探るような上目遣いの視線から、思わず目を背けそうになる。
けれど、祐が私の顎を掴んでそれを制した。


顔の向きを強引に固定されて、私は無意識にゴクッと唾をのんだ。
一瞬視線を揺らして、逃げ場のないまま、おずおずと祐を見つめ返す。


彼は瞳を揺らすことなく、私の答えを真剣な表情で待っていたから、私は一度だけ小さく頷いた。
私の反応を最後まで確認して、祐は脱力したような苦笑を漏らす。
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