イジワル外科医の熱愛ロマンス
「はは……。なんだよ、まったく」


困ったような、呆れたような。
なんとも複雑な感情がこもった笑い声をあげて、祐は私の目の前でがっくりとこうべを垂れた。


「俺たち、婚約までしてたのに。昔両想いだったことも知らずに。……はああ」


ボヤくような、そして深く悔やむような祐の言葉に、私の胸もきゅんと疼いた。


「ほんと。こんなの、すごい今更ですね……」


なぜだろう。
なんだかとても切ない。


鼻の奥の方がツンとしてきて、笑いたい気持ちは消え去った。
目を伏せ唇を震わせる私に、祐は首を横に振った。


「今更じゃない」

「……え?」

「最初から嫌われてたわけじゃないなら、俺にもまだ挽回の余地はあるだろ?」


そう言って、祐は顎を掴んでいた手を離し、私の頬をそっと撫でた。
その仕草にドキッとしながら、目線を上げる。
私が見つめるのを確認して、彼はニヤッと強気な笑みを浮かべた。


「雫。俺は今でもお前が好きだ。お前にもう一度、俺を好きにさせてみせる」

「っ、祐……」


一度跳ね上がった鼓動が、祐の一言で再び加速度を増す。


「前にも言った。お前の身も心も、絶対落としてやる」


フッと細めた目で、祐が私を射貫く。
< 209 / 249 >

この作品をシェア

pagetop