イジワル外科医の熱愛ロマンス
祐が戻ってくる前に、私は一次会を途中でお暇した。
そのおかげで、家に戻ってきた時、時計の針はまだやっと二十一時半を指したところだった。
玄関に入った私を、住み込み家政婦の澄子さんが出迎えてくれる。
「お帰りなさい、雫さん」
それには靴を脱ぎながら、「ただいま」と一言返した。
食事はいらない、と連絡してある。
澄子さんも、私が廊下に上がるのを見て、「先に休ませてもらいますね」と自室に引き返していった。
その背に「お休みなさい」と挨拶をして、私は廊下を進まず、すぐに階段を上る。
私の部屋はこの螺旋階段を上ってすぐの二階にある。
私の家、本郷家は、旧華族の家柄で、世間的には『名門』と言われる家系だ。
家系図を遡っていけば、戦国時代の名武将の名前が出てくる。
けれど、今のご時世、そんなもの、なんの価値もない。
今この家にあるのは、昔から受け継がれてきた家名と、都心の一等地にいくつかある土地。
そして時代錯誤なしがらみだけ……。
はあっと声に出して溜め息をつきながら、私は自室のドアを開けた。
そのおかげで、家に戻ってきた時、時計の針はまだやっと二十一時半を指したところだった。
玄関に入った私を、住み込み家政婦の澄子さんが出迎えてくれる。
「お帰りなさい、雫さん」
それには靴を脱ぎながら、「ただいま」と一言返した。
食事はいらない、と連絡してある。
澄子さんも、私が廊下に上がるのを見て、「先に休ませてもらいますね」と自室に引き返していった。
その背に「お休みなさい」と挨拶をして、私は廊下を進まず、すぐに階段を上る。
私の部屋はこの螺旋階段を上ってすぐの二階にある。
私の家、本郷家は、旧華族の家柄で、世間的には『名門』と言われる家系だ。
家系図を遡っていけば、戦国時代の名武将の名前が出てくる。
けれど、今のご時世、そんなもの、なんの価値もない。
今この家にあるのは、昔から受け継がれてきた家名と、都心の一等地にいくつかある土地。
そして時代錯誤なしがらみだけ……。
はあっと声に出して溜め息をつきながら、私は自室のドアを開けた。