イジワル外科医の熱愛ロマンス
どこまでも強気な宣言に、私の胸は一際大きな音を立てて跳ね上がった。


「ゆ、祐……」


戸惑って呼びかける私の唇の前に、『しっ』と右手の人差し指を立てて制する。


「NOは聞かない。覚悟しろ」


祐は、意地悪に口角を上げた。


「一方的に破談にされた婚約、今度はお前自身が望むように、じっくり仕掛けてやる」


そう言って、彼は私の後頭部に手を回した。
そのまま強く引き寄せられ、私は抵抗する間もなく、呆気なく唇を奪われてしまった。


触れてすぐ啄むように動く祐の唇に、私は身を強張らせるだけで抗えない。
上手く呼吸ができず、無意識に祐の胸に両手を置いた。
けれど、その手に力は入らず、押し返すこともできない。


「……ん、っ……」


頭では、祐を止めなきゃ、と思考回路が働こうとしている。
なのに、心は祐の言葉に強く激しく揺さぶられていた。


祐の言葉が傷になり、中学の時からずっと抱え続けたトラウマ。
十年以上も経った今、彼が言ってくれた言葉が、私の心をくすぐり、ときめかせる。


深く強く貪るようなキスに、今、祐の心があるなら。
私を好きだと言って、求めてくれるのなら――。


ここからもう一度、ちゃんと祐に向き合うべきだ。
一度は断ち切った祐への初恋に。
そして、今の祐の想いにも。
< 210 / 249 >

この作品をシェア

pagetop