イジワル外科医の熱愛ロマンス
GW明け、出勤一日目。
いつも月曜日に行われる心臓外科医局の全体朝礼が終わると、美奈ちゃんがコソコソッと私に近付いてきた。


「雫さ~ん。……宝生先生との出張、どうでした?」


まだ周りにいる医局員たちを憚って声を潜めながらも、美奈ちゃんは目をキラキラさせて私を覗き込んでくる。
その探るような視線に、私の胸はドキッと跳ね上がる。
美奈ちゃんにチロッと横目を向けて、一度大きな息をついた。


「美奈ちゃん……。もしかしてって思ってたんですけど。わざと、ですか?」


私より少し背の低い彼女に目線を下ろしながら、あれからずっと胸の奥底に抱いていた疑問を、率直にぶつけてみる。
美奈ちゃんはギクッとしたように肩を揺らし、いきなりシャキッと背筋を伸ばした。


「わ、わざとって。なんですか?」


その反応が、十分な答えだ。
私は肩を竦めて溜め息をついた。


私がお願いした新幹線のチケットが取れなかった方か、私の分のホテルが手配できなかった方か。
どっちかはわからないけれど、美奈ちゃんがこうやって探ってくるなら、意図的だったとしか思えない。


出張先での夜……。
私が祐と同じ部屋に泊まる羽目になったのは、元を辿れば美奈ちゃんが仕組んだことだった。
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