イジワル外科医の熱愛ロマンス
「ゆ……宝生先生とは、なんにもなかったですから」

「え」


気を落ち着かせてそう言うと、二人がわかりやすく失望したような声を漏らす。


「お二人とも、なにを期待してるのかわかりませんけど、私と宝生先生が一緒に大阪にいたのは、あくまでも出張、仕事中なんですし……」

「そうそう。ちゃんと職務だけをまっとうして、帰ってきましたよ」


私が胸を張って言った言葉を、後ろから近付いてきた声があっさりと遮った。
クスクス笑う声に、私たち三人がほとんど同時に振り返る。


「な? 本郷さん」


背後に立った白衣姿の祐が、口元を軽く隠して、肩を揺らして笑っていた。
同意を求められた私はいち早く反応して、ぶんぶんと勢いよく首を縦に振ってみせる。
それに『え~』と失望を強めたような声を漏らしたのは、木山先生だった。


「なんだ。あの時点では一応『彼氏』だった僕にあんな正々堂々と同衾宣言してくるくらいだから、むしろ潔い男だなって思ってたのに」

「どうきん……?」

「『同じ部屋』とは言いましたが、ベッドを共に、とは言ってませんって。現にあの夜の部屋はツインだったし」


木山先生の言葉を拾って、美奈ちゃんが不思議そうに首を傾げる途中で、祐が困ったように説明する。
< 213 / 249 >

この作品をシェア

pagetop