イジワル外科医の熱愛ロマンス
私もそれを聞いて、木山先生が言った『同衾』の意味に行き着いた。


「きっ、木山先生!!」

「本郷さん。過剰反応するな。現に本当になにもなかったろ?」


頬を赤く染めて声をあげた私にシレッと横目を向けて、祐が窘めるようにそう言った。
一瞬口ごもる私を見て、満足げに目を細める。


「え~……なんだ、本当にそうなんですか。残念……」


そう言って肩を落とす美奈ちゃんは、どんなことを期待していたんだろう。
それが大いに疑問だけど、それ以上探られる気配もなく、私はホッと息をついて自分のデスクに向かいかけた。
ところが。


「出張中、はね」


祐が妙に意味深に言葉を区切りながら付け加えるのを聞いて、私は一瞬間を置いてからギョッとした。


「ゆ、祐っ!?」


思わず名前で呼びながら、大きく振り返ってしまう。
祐は私の視線を受けて、ニヤッと口角を上げると、軽く右手を振って医局のドアに大股で向かってしまった。


私は口をパクパクさせるだけで、なにも言うことができず、ただ、医局から出ていく祐の背を見送るだけ。
そんな私に注がれるのは、興味津々に細められた二人分の視線――。


「『出張中』は」

「その後、GW中になにかあったって、主張するような言い方だったね」
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