イジワル外科医の熱愛ロマンス
「背景はどうあれ、一度は婚約していた女性とそこからなんて、僕なら耐えられない」


木山先生に同意するかのように、美奈ちゃんもうんうんと頷いた。


「しかも、どう見ても肉食系の宝生先生が。正直、同じ部屋で一晩過ごすというチャンスを棒に振るなんて、もっと考えられない」


それには私も『う』と口ごもった。
そこをツッコまれると、ちょっと苦しい。
結果的になにもなかったのは、私と祐が同じ部屋で一晩過ごさなかったせい。
その理由と言ったら、祐に襲われかけた私が、全力で拒んだからだ。


笑顔を引っ込めて動揺する私に、木山先生は目を細めてクスッと笑う。
そして、「ねえ、本郷さん」と私の肩をポンと叩いた。


「もう一度好きになる、っていうのは、宝生先生の手腕によるから、僕は正直、それほど心配していない」

「……え?」

「どうやら君の気持ちも前向きみたいだし、彼が本気で口説きにかかれば、まあぶっちゃけ、時間の問題だと思うし」

「え、っと……」


そこを木山先生から強気に言い切られて、私は戸惑って首を傾げた。
美奈ちゃんも、木山先生が次になにを言うのか、興味津々に窺い見ている。


「ただね。どんなに嫌な思い出で終わったとしても、今から初恋をやり直しちゃいけない。だって君も宝生先生も、もうアラサー。立派な大人なんだから」
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