イジワル外科医の熱愛ロマンス
私は目を凝らして、木山先生をジッと見上げた。
彼はニコッと笑いかけてくれる。


「もう一度宝生先生を好きになったら、そこから育むのは大人の恋。淡く綺麗なだけじゃない、汚くもあり、醜くもある大人になってからじゃなきゃできない恋を、宝生先生に教えてもらって」


その言葉に、私の胸がドキッと跳ねた。


大人になってからじゃなきゃ、できない恋。
汚くもあり醜くもあるというのは怖いと思うのに、なぜかトクンと胸が鳴った。


美奈ちゃんは、木山先生の言葉に、さっきよりも大きく首を縦に振っている。


「木山先生、学生に教えてるだけあって、たまにすごくいいこと言います」

「美奈ちゃん。そうやってさりげなく僕を貶すのはやめてくれないか」


木山先生が頬を引き攣らせて苦笑するのを無視して、美奈ちゃんは私に畳みかけてきた。


「雫さん。私も思うんです。現実の恋に、やり直しなんかあっちゃいけない。特に雫さんは、そういう恋に慣れちゃってるから」

「え? 私が慣れてる、って……」


私は美奈ちゃんの言葉に戸惑い、彼女の大きなまん丸の目を見つめ返した。


「慣れてるでしょう? 雫さんが大好きな、傷つかずにドキドキできるゲームの恋。でも、傷つかないのは、何度だってやり直しが利くからですよ」
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