イジワル外科医の熱愛ロマンス
木山先生たちに言った通り、出張中は仕事に徹して、祐との間になにもなかったのは本当のこと。
でも、彼が意味深に匂わせた通り、GW明けで出勤するまでの間に、何度か二人で会っていた。


私にとって、『初めてのデート』。
あまりにも緊張して、ゲームの中で翔君とデートするのとなにも変わらない、と自分に言い聞かせた。
だって……情けないけれど、『デートだ』と意識してしまったら、動けなくなってしまいそうだったから。


そんな私に祐は、『俺と出かけることくらい、今までだってあっただろ』と苦笑気味だった。
そうは言っても、そんなのただの気休め。
今までと同じ感覚ではいられない。


今の祐の想いに向き合おうと、一歩踏み出した私の心臓は、彼と一緒に過ごすだけでもバクバクと爆走していたのだ。


綿密に練られたシナリオを読んで、ハッピーエンドまでレールが敷かれたゲームでもらえるドキドキは、リアルの鼓動とは比較の対象にもならない。


だって、祐と過ごす時間の中では、正解に導いてくれる選択肢がないのだ。
祐の問いかけにどう答えるか、彼の行動に対して私がどう反応するのか。
選択肢は無数にある上、それは自分で生み出さなきゃいけない。
< 219 / 249 >

この作品をシェア

pagetop