イジワル外科医の熱愛ロマンス
十畳ほどの広さがある部屋には、昔から使っている学習机と、セミダブルの大きなベッド、書棚にテレビと、それほど普通と変わりない家具類が置かれている。


私はバッグを床に置き、そのまま倒れ込むようにしてベッドにダイブした。
顔を枕に埋めて、お腹の底から大きく息を吐いてから、ゴロンと寝返り、天井を見上げる。


白い壁紙の天井をぼんやりと眺めていると、昨夜まではまったく浮かぶこともなかった祐の顔が、脳裏を過った。
つい先ほどまで目の前で見ていたせいか、追い払おうとしてギュッと目を閉じても、なかなか消えてくれない。


焼きついてしまった。
それがとても鬱陶しくて、私は目の上で両手の指を組み合わせた。


「最悪……」


思わず、そんな声が漏れてしまう。


意志の確認もなく勝手に決められた婚約は、暴君だった祖父が亡くなり、私の父が当主の座に収まったのを機に、必死な交渉を経て破談にすることに成功した。


あれから二年。


一生独りでも生きていけるようにと、真剣に仕事を探して、今の医局で採用してもらった。
最初は右も左もわからなかったけど、医局秘書の仕事にもようやく慣れてきた。


やっと、楽しく充実した生活を送ることができるようになったところだ。
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