イジワル外科医の熱愛ロマンス
「はい……。寂しかったです」


私の返事は、祐にとっては相当意外だったのかもしれない。
言い切った後、彼は黙っているだけで、結局私の方が焦れて振り返った。


「祐」

「ああ、悪い」


呼びかけてやっと、祐は我に返った。
パチパチと瞬きをしてから、はは、と苦笑する。


「またゲームで勉強でもしたのか? 雫らしくないセリフ」


やっぱりからかい交じりにそう言って、祐は私の前に進んできた。
シャワーを浴びた後のせいか、彼は白いシャツをはだけたままで、ルーズなシルエットのパンツという、かなりラフなスタイルだ。


「……ゲームは、あれからやってません」


テラスに入る前よりも、鼓動が加速しているのを感じる。
私は俯き加減で小さな声で返事をした。


「へえ? 俺と二回デートして、少しは男心をくすぐるコツ覚えた?」


パンツのベルトホールに指を引っかけ、背を屈めて私を覗き込んでくる。
思わず背を仰け反らす私をジッと見据えて、彼はすぐに背筋を伸ばした。
そのまま私の横を通り過ぎ、ピアノの蓋をパタンと閉める。


「で? 今日はどうした?」


用件を促されて、私はバッグの中から本を取り出し、祐の前に差し出した。
彼は本に視線を落とし、きょとんとして首を傾げる。
< 227 / 249 >

この作品をシェア

pagetop