イジワル外科医の熱愛ロマンス
「祐が、好きです」


私ははっきりとそう言って、背を屈めて祐の首に抱きついた。
耳元で、彼が小さく息をのむ気配が伝わってくる。


「初恋の感覚だけなら、もうとっくに……私は、祐が好きって気持ちを、取り戻しています」


そう言いながら、両腕に力を込め、祐の肩に額を預けた。


「でも、違う。これだけじゃ、ダメなんです」


言っているうちに混乱しそうになり、私は小刻みに首を横に振った。
祐は私の腕の中で、ただ黙っている。


「私の初恋は、中学生の時に終わりました。そこからもう一度やり直すには、祐はもう十分大人で。私も、経験なんかなくても、あれから少しは育っていて。だから……」

「急がずゆっくり。物足りなくて、焦れたか?」


祐が静かに私を遮る。
そして、片腕を私の肩に回し、その手で後頭部を押さえつけた。


私の心のど真ん中を簡単に射貫いてくるその言葉に、私は小さくコクンと頷く。
祐が、クッと小さく声を漏らして笑った。


「それで当然だ。俺は、お前がそう思うように、仕掛けてたんだから」

「……え?」

「雫には、俺への警戒心を根本から解いてもらいたかったから、『急がない』って言ったけどな。正直なところ俺はそこまで気の長い性格じゃない。もちろん……最初から勝算があったからできた仕掛けだ」
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