イジワル外科医の熱愛ロマンス
グイッと再び正面に向けられ、まるで噛みつくようにキスをされる。


「んっ……!」


今までになく荒々しいキスに、一瞬私の身は竦む。
それでも唇はすぐに離され、両腕を突っ張って私を囲い込んでいる祐を見上げた。
天井から降り注ぐ明かりは祐の身体で遮られ、私には彼の影が落ちている。


「悪い。優しくしてやりたいんだけど……自分で思った以上に、余裕ない」


私の視線を受け、祐が短くそう言った。
サラッとした前髪が目元を隠し、彼の目に私が映っているかはわからない。


「ゆ、祐、あの……」

「今思うと、前にこうした時、お前が俺を拒んでくれてよかったって思う。あの時俺は……お前にちゃんと恋をしていたわけじゃなかったから」


ちょっと低い声でそう言うと、彼は顔を伏せてブルッと背を震わせた。
私はただ、言葉の続きを待って、祐をジッと見つめる。


「いつも心の片隅に、雫がいた。でも、それは、お前と同じ。俺にとってもお前が初恋だったから。心残りだけで、綺麗すぎる子供の頃の思い出。だから雫と婚約が決まった時、やっと手に入れたっていう達成感の方が強くて……拒まれて、ただ悔しくてショックで」


祐はそう言って、ハッと短く浅い息を吐いた。
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