イジワル外科医の熱愛ロマンス
祐の白衣に萌えるよりも、今度、ドクターキャラがいる恋愛ゲームでも始めた方が、実害もなく平和だ。
自分にそう言い聞かせてから、私は午後の業務を再開しようとして、パソコンのロックを解除した。
その時。


「本郷さん。ちょっと頼みたいことがあるんだけど」


そんな声がすぐ横から聞こえてきて、私はギクッとしながら手を止めた。


「え?」


無意識に聞き返しながら顔を上げると、すぐそこに白衣の祐が立っていた。
思わず足で床を蹴り、彼から椅子ごと距離を離す。
それを見て、祐はムッと表情を歪める。


「なに逃げてんだよ」


美奈ちゃんの席からはちょっと離れていて、彼女に背を向けているからか、祐はわかりやすく不機嫌に声を潜める。
私は一瞬跳ね上がってしまった鼓動を抑えようとして、胸に手を当てながら顔を背けた。


「逃げてるわけでは。ただ、いきなり来られて驚いたもので……」


そう言いながら、椅子のキャスターを転がして、逃げた分の半分くらい戻る。
それでもしっかり間隔は開けたまま、肩を強張らせて口を開いた。


「なにか、ご用でしょうか」

「キャンパス内、案内してくれる?」

「っ、え?」


サラリと告げられたその頼みに、私はギョッとして目を剥いた。
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