イジワル外科医の熱愛ロマンス
「仕事だろ。嫌がるなよ」

「嫌がってるわけじゃ」


祐が引いてくれないから、固辞する私の方が間違っているような気がしてくる。
やっぱり美奈ちゃんに助けを求めよう。
そう思って、彼女の名前を口にしかけた。


その途端。


「ほら。言い合ってる時間がもったいないだろ、行くぞ」


祐は私が一言発する前に、後ろから羽交い締めにするように、私の口を大きな手で塞いだ。
背中に祐の体温を感じて、ギョッとして大きく息をのむ。


「んっ、むむむっ……!」


ドクッと、胸が大きく飛び上がった音を立てる。
私は慌てて彼の手を自分から引き剥がそうとした。
だけど、私の耳元に彼がふっと唇を寄せるのを感じて――。


「バラすぞ。いいのか?」


そんな脅迫を耳打ちされて、私の身体はピキッと硬直した。


「洗いざらい、全部。ついでに、どう恥ずかしがろうが、医学部棟から身投げなんてさせねーからな」


更に低めた声で続けられ、私は大きく目を見開いた。
彼の手に両手をかけたまま、ただ何度もコクコクと頷いてみせる。


「よし。じゃ、早く来い」


祐はどこか満足げにそう言って、私の口から手を離してくれた。
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