イジワル外科医の熱愛ロマンス
国立の総合大学である東都大学のキャンパスは、都内の大学でも随一の広さを誇る。
広大な敷地には、七つの学部の校舎が点在している。


もちろん、全部回っていたら丸一日はかかるし、そもそも医学部助教の祐に、文学部や社会学部は無意味なはず。
必要なところだけ……と吟味して案内しても、結構な時間がかかってしまう。


祐が美奈ちゃんに言い残したように、キャンパス内を二時間も一緒に歩きたくないけれど、実際本当にそのくらいの時間が必要だ。
いくらこれも仕事とは言え、突然言われて二時間は痛い。
医局に戻ってからの残務の段取りを考えながら、私はちょっと早足で歩いた。


だと言うのに……。
案内しろ、と言った割に、祐の反応は、どこに連れて行っても抑揚もなく平坦で、つまらなそうなものだ。


「ここが大講義室です」

「ふ~ん」

「ここが大学学食です」

「へー」

「附属病院と大学図書館に行くには、このレンガ畳の道が一番近いです」

「……ふわあ……」


私の説明も右から左。
大して興味もなさそうで、とうとう欠伸までし始めた。


反応の薄い祐に地味にイラッとしながらも、私は彼の一歩先に立って、とにかく自分の職務を邁進することに努めた。
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