イジワル外科医の熱愛ロマンス
附属病院の職員通用口で、セキュリティの通過方法を教えてから、ずんずんと廊下を突き進む。


「ここが病院図書館です」

「…………」


どう見ても暖簾に腕押しの反応しかしない祐を中に連れて行くことはせず、ドアの前を素通りして病棟に上がるエレベーターに乗り込んだ。
そして、最初から四階のボタンを押す。


「二階には職員食堂があります。それで、ここが四階。循環器病棟です」


ドアが両側に開くのを待ち、エレベーターのボタンを押して、先に祐を送り出す。
彼が私の横をスッと通るのを横目に、私もその後からゆっくり病棟のフロアに足を踏み出した。


先に降りた祐が、ここに来てようやく軽く辺りを見回す仕草を見せる。
さすがに、自分の職場になると思えばいくらか反応も見せるのか。
そんなことにちょっとホッとしながら、私はチラッと腕時計に視線を落とした。


「この時間なら、病棟のナースさんたち、カンファレンスを行ってます。ご挨拶なさいますか?」


祐の病院勤務開始時に、挨拶回りの時間はゆっくりスケジューリングしてある。
だけど、せっかく来たことだし。
その前に顔を出しておいても、失礼に当たることはない。
そう思って、一応気を利かせて提案したつもりだ。
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