イジワル外科医の熱愛ロマンス
研修医として来た……ってことは、私なんかよりずっと前に、祐はこの東都大学医学部に足を踏み入れてるってことだ。
だったら、大学も病院も……今まさに私が案内してきた場所は、すべて私よりも知ってるということのはず。


訝しい気持ちが増し、むしろ不審な気持ちで、祐を見つめる目に力を込める。
顔を背けているくせに、私がどんな反応をしているか感じ取っているのか、祐はほんのわずかに沈黙した後、溜め息をついた。


「三年、ですかね。あの頃はお世話になりました」


どうやら、誤魔化すのは諦めたようだ。
まだ私からはそっぽを向いたままだけど、看護係長さんには丁寧な返事をする。


「そうそう。まだ専門悩んでた頃だったわよね~。でも、心臓外科に来てくれて嬉しいわ。園田教授も、喜んでるでしょ」


祐が会話に反応するのが嬉しいのか、看護係長さんはますます朗らかな声をあげた。
祐は開き直った様子で、苦笑しながら、「ありがたいことに」と答える。


三年前に医局にいた……ってことは、若い助教や講師の先生だと入れ違いの人も多いけれど、少なくとも教授や木山先生、それに美奈ちゃんも祐を知ってたということだ。
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