イジワル外科医の熱愛ロマンス
医学部棟に戻る為に、レンガ畳の道を歩く。
まだ大学は始まっていないから、辺りに人気はない。
私の急ぎ足の靴音が、コツコツと響くだけ。
私は無駄に胸を張り、ただ真っすぐ前だけ向いて歩いた。
祐へのイライラが顔に出ないよう、必死に奥歯を噛みしめていたけど、やっぱり顔の筋肉がピクピクと痙攣してしまう。
なんなのよ。なに考えてんの。
頭の中は、祐に対する不可解さと不信感でいっぱい。
つい、ブツブツと愚痴ばかりを繰り返し口に出してしまう。
私が仕事以外で話しかけるなと言った腹いせなんだろうか。
でも、間違ってない。
仕事以外では、話すことなんかなにもないんだから。
それのなにが不満だと言うの。
嫌でも唇が尖がってしまうのを自覚した時。
「おい、雫!」
背後から、名前を呼ばれた。
同時に、私のとは別の大きな足音がレンガ畳の道に響くのが聞こえる。
「だから、名前で呼ばないでください、と……」
誰かなんて、確認しなくてもわかる。
足を止めて振り返りながら声をあげると、附属病院の方から、白衣姿の祐が弾むように駆けてくるのが見えた。
「誰もいない。聞かれなきゃ別にいいだろ」
ここまで走ってきたくせに、特に息を乱した様子もない。
祐は私の前まで来て足を止めると、一度ふうっと息をついた。
まだ大学は始まっていないから、辺りに人気はない。
私の急ぎ足の靴音が、コツコツと響くだけ。
私は無駄に胸を張り、ただ真っすぐ前だけ向いて歩いた。
祐へのイライラが顔に出ないよう、必死に奥歯を噛みしめていたけど、やっぱり顔の筋肉がピクピクと痙攣してしまう。
なんなのよ。なに考えてんの。
頭の中は、祐に対する不可解さと不信感でいっぱい。
つい、ブツブツと愚痴ばかりを繰り返し口に出してしまう。
私が仕事以外で話しかけるなと言った腹いせなんだろうか。
でも、間違ってない。
仕事以外では、話すことなんかなにもないんだから。
それのなにが不満だと言うの。
嫌でも唇が尖がってしまうのを自覚した時。
「おい、雫!」
背後から、名前を呼ばれた。
同時に、私のとは別の大きな足音がレンガ畳の道に響くのが聞こえる。
「だから、名前で呼ばないでください、と……」
誰かなんて、確認しなくてもわかる。
足を止めて振り返りながら声をあげると、附属病院の方から、白衣姿の祐が弾むように駆けてくるのが見えた。
「誰もいない。聞かれなきゃ別にいいだろ」
ここまで走ってきたくせに、特に息を乱した様子もない。
祐は私の前まで来て足を止めると、一度ふうっと息をついた。