イジワル外科医の熱愛ロマンス
反射的に顔を上げ、すぐ目の前にムッと唇を結んだ祐が立っているのを見つける。
途端にドキッと胸が跳ね上がり、私は一瞬その場に凍りついてしまった。


「ずいぶん熱中してたみたいだけど、お前なにして……」


祐は嫌味っぽい溜め息をついてから、私の手から取り上げたスマホに視線を落とす。
私はそれを見てハッと我に返り……。


「っ……! や、ダメ! 返して!!」


カッと頭に血が上ったかと思ったら、一気にサーッと足元まで引いていく乱降下を味わった。
慌てて両手を伸ばして、彼からスマホを取り返そうとする。


だけど私の反応が必死すぎたせいか、祐は「ん?」と訝しげに眉を寄せ、スマホにしっかりと注意を向けてしまう。
そして、そこに映し出された翔君の立ちスチルを、バッチリ見てしまった。


「……なんだ? これ」


もちろん、彼が『雫』と呼びかけていることも、デート中の甘い会話も。
私が脇目も振らずにのめり込んでいた世界を全部目にして、目も口もポカンと大きく開けている。


「か、返して!!」


私の頭の中はもう真っ白だった。
とにかく、祐の手からスマホを取り戻すのが先決!
けれど、彼はひょいっと頭上高くに掲げてしまう。
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