イジワル外科医の熱愛ロマンス
呆然として手を震わせる私を見下ろし、祐がほくそ笑む。


「安心しろ。二次元なんかじゃなく、リアルの生身でドキドキさせてやるよ」

「っ……え?」


半泣き状態で見上げた私を見て、彼はフッと意地悪に目を細める。


「俺の方も、それでいくらか気が晴れる。いいか。俺がお前のすべてを奪う。覚悟しろ」

「か、くご……?」


私のすべて、という言葉が具体的になにを示しているのか、それを奪うことで祐の気が晴れるとはどういうことか、私にはまったくわからない。
それでも、とにかく不気味な響きに感じたのは確かだ。


怯えながらもきょとんとした私に、祐は心底鬱陶しそうに眉を寄せた。


「わからないのか。未経験なのは差し引いても、ほんと鈍いな。……こういうことだよ」


忌々しそうに表情を歪めて、そう言って――。


「……っ!?」


強く腕を掴まれ引っ張られるのと同時に、私は息をのんだ。
大きく見開いた目に映る視界が、祐の顔で埋め尽くされる。


顎を掴まれ、喉が仰け反るくらいに顔を上に向けられた。
頭上から真っすぐに、祐の影が降ってくる。
そして次の瞬間には、なにかとても温かく柔らかい物が、私の唇に押し当てられていた。
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