イジワル外科医の熱愛ロマンス
私の言葉を聞いて、美奈ちゃんが怪訝そうに首を傾げる。


「秘書としてあり得ない、初歩的なミスを……」


いや、秘書としてだけじゃない。
このくらい、小学生だって間違えずにできるだろう。


頬の筋肉が引き攣りそうなのを自覚しながら、私はぎこちなく笑みを浮かべた。
その時、祐が美奈ちゃんに追いついて、白々しいほど明るく会話に割って入ってきた。


「初歩的って? 本郷さん、手堅くカッチリした仕事しそうなのに、ミスなんてやらかすんだ?」


わざとらしく丸くした目を私に真っすぐ向けて、そんなことを口走る。
私の胸はまたしてもドキッと跳ね上がり、慌ててそっぽを向いた。


「じ、自分のミスを正当化するわけじゃありませんが、ミスしない人間なんていません」

「でもミスってほどでもないよ。本のタイトル間違えただけたしね」


私の反論に被せるように、木山先生はそうフォローしてくれる。
祐がクスッと笑う声が、私の耳をくすぐった。


「へえ。確かに初歩的っちゃ初歩的ですね。……けど、生真面目でお堅いお嬢様かと思ってたけど、意外と可愛い抜けたところもあるってことだ」


祐が流れるように口にした『可愛い』って言葉に、頬にカッと熱が上るのを感じた。
そのまま、カアッと火照ってくるのがわかる。
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