イジワル外科医の熱愛ロマンス
大きな溜め息をつきながら、クシャクシャのメモをデスクに広げた時。
視界の端に、フッと白い影が映り込んだ。
ハッと息をのんだまま、私は全身を硬直させる。
まだ会話を続けていると思っていたのに、私と同じように抜けてきたのか。


「なあ」


机の端を、しなやかな人差し指の先でトンと叩きながら、私の横に立った祐が声を潜めて呼びかけてきた。
天井から降ってくる蛍光灯の明かりをその身体で遮っているのか、私の頭上から祐の影が落ちてくる。
それがまた、さっきの図書館での出来事を彷彿とさせて、メモの上に乗せた私の手がカタカタと震えた。


それに気付いてかどうか。


「大混乱中……ってとこか?」


祐は小声でからかうように言いながら、私の手に自分の手を重ねてきた。
私がビクッと肩を強張らせるのを確かめてから、重ねた手に力を込めて、キュッと握り締めてくる。
そして、どこか意地悪にフッと声を漏らして笑った。


「お前のそういう中学生のガキみたいな反応、ツボに入るな。……こっちも癖になりそうだ」

「っ……!」


身体中をガチガチに固まらせる。
息を吸ったまま吐くことができず、呼吸すら上手くできなくなった。
火照った顔が、耳まで熱い。頭から湯気が出そうなくらい、今私の顔は真っ赤になってることだろう。
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