イジワル外科医の熱愛ロマンス
だけど、木山先生に合わせるとしたら、開始は早くて七時と言ったところ。
一次会だけ参加するにしても、そこから二時間から三時間と計算して……家に帰る頃、時計は十時を回る。


ほんのわずかな間逡巡して、「ごめんね」と断ろうとした時、教授室のドアが開いた。
その開閉音を聞いて、私も美奈ちゃんもほとんど反射的に顔を向けた。


そこから、白衣を羽織った木山先生と園田教授が出てくる。
ビシッと背筋を伸ばしながら、私はその後に続いたブラックスーツの男性に目を遣った。


彼が件の新ドクターか。
パッと見、私と年齢が近そうだし、後期研修医課程を終えたばかりの助教という感じ……。


そんな予想をしながら、長身でスタイルのいいその姿をぼんやりと眺めていたら、彼がフッと顔を上げた。
そして、その視線が私の方に向けられ……。


「っ」


小さく息をのんだ。
そのまま、呼吸の仕方を忘れたように、ヒクッと喉を鳴らしてしまう。


「お、本郷君。秘書連絡会は終わったのかな?」


私に気付いた園田教授が、そう言ってニッコリ笑った。
息を吸ったきり吐くことを忘れていた私は、その一言を聞いて一度ゴクッと唾をのんだ。


「は、はい」


やっとの思いで、それだけ返事をする。


「本郷さんも、この後来れる? 歓迎会」


木山先生にもそう続けられて、私は返事に窮してしまった。
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