イジワル外科医の熱愛ロマンス
ここ数日、気を張っていたせいで、澄子さんの料理をゆっくり味わう余裕さえ失っていた。
ようやく迎えた金曜日の夜、澄子さんが用意してくれた夕食が、とても美味しい。
そう感じることができる当たり前の日常がとても嬉しくて、何度もズッと鼻を啜る私に、澄子さんは不思議そうに首を傾げていた。


食事を終え、ゆっくりお風呂に浸かった後は、もう夜更かしをする元気もなかった。
ベッドに突っ伏してスマホの操作をしているうちに、私はいつの間にか睡魔に引きずり込まれ、深い深い眠りについてしまった。


そして、翌朝――。
大きな窓に天井から下がっているカーテンの隙間から、細い光が射し込んでくる。
閉じた目蓋の裏側が白く発光するのを感じ、無意識に布団から腕を出して、目元に乗せて光を遮った。


「ん……」


まだしっかり覚醒には至らず、寝言のような、小さな呻き声を漏らしたその時。


「おい、いつまで寝てんだ。起きろ、雫」


淡々とした低い声が頭上から降ってきて、私は勢いよくバチッと目を開けた。


「っ、え？」


射し込む光に一瞬目を眩ませながら、不可解な思いで聞き返した。
いや、聞き返す自分がわからない。
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