イジワル外科医の熱愛ロマンス
胸の下に回された太く力強い腕に、私のパニックは煽られる。


「きゃああっ! た、助け……」

「お前、元婚約者の声もわからないのかよ? いい加減ちゃんと目、覚ませ。俺だって。祐」


呆れたような溜め息と共に、そんな声が聞こえた。
それには「え?」と目を見開き、とりあえずジタバタするのはやめる。
そして、そおっと顔を上げた。


「……祐?」


細い光のおかげで、室内の家具は仄白く浮き上がって見える。
肩越しに見上げたその姿が、確かに祐だと確認できた。


一瞬抵抗の芽を削がれながらも、私はすぐにハッと我に返る。


「な、ななななんで!? なにを勝手に人の家に、私の部屋に入ってきてるんですか!?」


ホッとしてる場合じゃない。
ある意味、私にとって祐は泥棒よりも危険人物だ。
身体を抱え込む腕を必死に解こうとして、私はそれまで以上にバタバタと激しく抵抗した。


「っ……、バカ、暴れんなって!」


『泥棒』に対して以上に抵抗を見せる私に、祐も声を張り上げた。
そして――。


「っく……いい加減にしろっ!」


鋭い声で叫ぶと同時に、私の左胸を遠慮もなくギュッと鷲掴んだ。


「!! きゃあああっ!!」
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