イジワル外科医の熱愛ロマンス
あり得ない場所から感じる手の感触に、私は頭から抜けるような絶叫を放った。
なのに祐は、その手に更に力を込める。


「ひゃうっ……」

「朝っぱらから変な声出すな。離してほしけりゃ、いちいち騒ぐのやめろ」


むにっと手を動かしながら、私の耳元にそんな脅迫を囁く。


「ふ、ううっ、んん……」


だったら朝っぱらからセクハラなんかしないでよっ!と言いたいのは、グッと堪える。
私は真っ赤な顔で半泣きになりながら、必死にコクコクと何度も首を縦に振って見せた。
それを見て、ようやく祐が手を離してくれる。


その途端、私は自分の胸を両手で抱えてガードしながら、壁際まで一目散に逃げて祐と距離を離した。
肩を上下させて息をしながら、自分にできる一番鋭い目をして、彼をキッと睨みつける。


「え、エッチ! スケベ、変態!!」


なのに、それほど迫力がなかったのか、祐は冷めたものだ。


「ああ、どれも否定しないよ。っつーか、お前早く着替えろ」


シレッと聞き流しながら、そんな命令を繰り出してくる。


「着替えたくても、あなたがいては無理に決まってるじゃないですか!」


当然のことを、私はムキになって言い返す。
臨界点を超えて打ち鳴った鼓動は、なかなか治まってくれない。
胸を抱える腕にまで、その拍動が伝わってくるほどだ。
< 76 / 249 >

この作品をシェア

pagetop