イジワル外科医の熱愛ロマンス
「本郷君?」


口ごもった私に、園田教授が、不思議そうな声で呼びかけてくる。
それを耳にしながら、私は一番最後に出てきたドクターから目を離すことができなかった。


私の視線に気付いたのか、教授が彼を振り返りながら、「ああ」と呟いた。


「本郷君、紹介しよう。四月一日から、ウチに来てもらうことになった、助教の宝生君だ」


教授の紹介に導かれ、美奈ちゃんも彼に視線を向ける。
彼女が私の隣で、「すごいイケメンですよねっ」と小さく囁くのが聞こえた。


私と美奈ちゃんの視線を真っすぐ受けながら、教授の紹介を受けた彼が、ニッと口角を上げて微笑んだ。


「特に本郷君には、宝生君のスケジューリングにも携わってもらうことになるから……」


教授がそう続けるのを、私はほとんど右から左で聞いていた。


「四月から、よろしくお願いします。森居さん。……本郷さん」


彼から名指しで挨拶されて、美奈ちゃんはピンと背筋を伸ばした後、深々と頭を下げた。


「こちらこそ、よろしくお願いします!」


顔を上げた彼女が元気に挨拶するのを聞いて、彼はニコッと笑顔で返した。
けれど……。


私は、顔を強張らせたまま、喉に張りついた声を出すことができなかった。
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