イジワル外科医の熱愛ロマンス
「まだ二次元ヒーローに現を抜かしてるってことか」
どこか不機嫌な声を聞いて、私もさすがにそれ以上スマホを弄れない。
結局、セリフ一つ読むことなく、再びバッグに戻した。
「……お前さ」
私の仕草を横目で見ていた祐が、真っすぐ前を向き、軽く口元に手を当てたまま、ボソッと呟いた。
私も黙ってその続きを促す。
「今日俺が誘ったのがコンサートじゃなかったら、来なかったか?」
そう訊ねられて、私は膝に乗せたバッグの上でギュッと手を握り締めた。
「……祐こそ、どうして私を誘ったんですか」
質問に質問を返した私に、祐がチラリと横目を向けるのがわかる。
彼の視線を感じて、私は肩を縮込めた。
返事を待ったのに、前方の信号が青に変わってしまった。
それを見て、祐は私からフイッと目を逸らし、なにも言わずに再びアクセルを踏み込んだ。
車はとても静かにゆっくりと発進する。
ほんのわずかにシートに背を引かれる感覚があるだけ。
祐はこう見えてとても丁寧な運転をする。
数回乗ったことがあるけど、荒っぽいことなど一度もなく、彼の隣はとても安心できる。
そんな感覚を思い出し、私は走り出した車の窓から、横に連なる車の列に目を向けた。
結局、どんな思惑で私をデートに誘ったのか、彼から聞き出すことができないまま、車はコンサート会場の駐車場に着いてしまった。
どこか不機嫌な声を聞いて、私もさすがにそれ以上スマホを弄れない。
結局、セリフ一つ読むことなく、再びバッグに戻した。
「……お前さ」
私の仕草を横目で見ていた祐が、真っすぐ前を向き、軽く口元に手を当てたまま、ボソッと呟いた。
私も黙ってその続きを促す。
「今日俺が誘ったのがコンサートじゃなかったら、来なかったか?」
そう訊ねられて、私は膝に乗せたバッグの上でギュッと手を握り締めた。
「……祐こそ、どうして私を誘ったんですか」
質問に質問を返した私に、祐がチラリと横目を向けるのがわかる。
彼の視線を感じて、私は肩を縮込めた。
返事を待ったのに、前方の信号が青に変わってしまった。
それを見て、祐は私からフイッと目を逸らし、なにも言わずに再びアクセルを踏み込んだ。
車はとても静かにゆっくりと発進する。
ほんのわずかにシートに背を引かれる感覚があるだけ。
祐はこう見えてとても丁寧な運転をする。
数回乗ったことがあるけど、荒っぽいことなど一度もなく、彼の隣はとても安心できる。
そんな感覚を思い出し、私は走り出した車の窓から、横に連なる車の列に目を向けた。
結局、どんな思惑で私をデートに誘ったのか、彼から聞き出すことができないまま、車はコンサート会場の駐車場に着いてしまった。