イジワル外科医の熱愛ロマンス
宝生総合病院が共催しているチャリティーコンサートは、国内最高レベルの演奏を手頃に楽しめることもあり、開場前からたくさんの人が集まっていた。
私は祐に促され、関係者入口から会場に入り、ロビーに出た。
たくさんの花が飾られた紅いカーペット敷きのロビーには、高級なスーツやワンピースに身を包んだ人たちが三十人ほど集まっていた。
このコンサートの主催企業の関係者だろうか。
よく見ると、その輪の中に、祐のご両親である院長夫妻の姿もあった。
まともに顔を合わせるのは久しぶりだ。
病院の経営者としての二人が、挨拶回りを終えるのを待って、一応挨拶をしておこうと思った。
けれど、祐に「いい」と止められた。
「後にしろ」
そう言って、私の肘を引く。
分厚いカーペットに細めのヒールが沈み、足を取られ歩き辛い。
祐はそれに構うことなく、さっさと二階に上がる階段に向かっていく。
「ちょ、ちょっと待って」
なにか急いでいるような祐の背中に、私はもたつきながら声をかけた。
同時に、私の声を掻き消すように、背後から「祐君」と呼び止められる。
それには、祐もピクリと眉尻を上げて足を止めた。
「こういう場で会うのは久しぶりだね」
呼ばれたのは私じゃないのに、祐につられて振り返ってしまう。
私は祐に促され、関係者入口から会場に入り、ロビーに出た。
たくさんの花が飾られた紅いカーペット敷きのロビーには、高級なスーツやワンピースに身を包んだ人たちが三十人ほど集まっていた。
このコンサートの主催企業の関係者だろうか。
よく見ると、その輪の中に、祐のご両親である院長夫妻の姿もあった。
まともに顔を合わせるのは久しぶりだ。
病院の経営者としての二人が、挨拶回りを終えるのを待って、一応挨拶をしておこうと思った。
けれど、祐に「いい」と止められた。
「後にしろ」
そう言って、私の肘を引く。
分厚いカーペットに細めのヒールが沈み、足を取られ歩き辛い。
祐はそれに構うことなく、さっさと二階に上がる階段に向かっていく。
「ちょ、ちょっと待って」
なにか急いでいるような祐の背中に、私はもたつきながら声をかけた。
同時に、私の声を掻き消すように、背後から「祐君」と呼び止められる。
それには、祐もピクリと眉尻を上げて足を止めた。
「こういう場で会うのは久しぶりだね」
呼ばれたのは私じゃないのに、祐につられて振り返ってしまう。