イジワル外科医の熱愛ロマンス

関係を窺うようなその視線に、私はどう答えるか判断を委ねて、祐を見上げた。
祐はわずかに眉を寄せていたけど、すぐにニッコリと微笑んだ。


「仰る通り、婚約は解消しましたが、家同士の関係は変わらず良好ですし、私と雫も幼なじみですから。彼女、クラシックが好きなので、せっかくの機会ですしお誘いしたんです」

「おやおや、そうか、今でも仲がいいということか……？」


祐の返事を聞いて、院長が探るように笑った。
心の中では『仲なんてよくない』と思いはしたけど、私はグッと堪えてのみ込んだ。
わざわざムキになって言い返すのは、スマートではない。
私はどこかモヤモヤしながらも、一応祐に倣って笑みを浮かべてみせた。


「祐君が女性を連れてるから、ちょっと焦ったよ。君のお父上とも話をさせてもらってるんだが、うちの娘との縁談の話を進めたいと思っていてね」


院長がそう続けて、隣の奥様に「な？」と同意を求めている。
それを聞いて、私は思わず祐を見上げてしまった。


彼も初耳ではないんだろう。
特に表情を変えることなく、張りついたような笑顔のまま、小首を傾げた。


「申し訳ありませんが、雫の前なので、その話は控えさせてください」

「ああ、これは失礼」