イジワル外科医の熱愛ロマンス
結局歓迎会を断るタイミングを失い、私は美奈ちゃんと木山先生に引っ張られるがまま、大学近くの洋風ダイニングに連行されてしまった。
大学の最寄駅と連結した雑居ビルの五階。
このお店は、ウチの医局の宴会では割と使用頻度の高いお店だ。


急な招集に集まったのは、私たち三人と本人以外に、教授と数人の講師や助教。
総勢十人ほどで、お店の隅に、長いテーブルを二つ繋げた席が用意されていた。
主役の彼は、教授や木山先生、他のドクターに囲まれてテーブルの真ん中にいる。


私は美奈ちゃんと並んで、一番端っこに腰を落ち着けた。
いつもこういった宴会では、私や美奈ちゃんがオーダーをとったりお会計したりするお世話係だから、なにも不思議なことはない。


みんなに生ビールが行き渡ると、木山先生に指名された女性ドクターが、その場にいそいそと立ち上がった。


「えー、では、僭越ではございますが、乾杯の音頭をとらせていただきます。宝生先生、心臓外科医局へようこそ!」


そう言いながら、ずっとチラチラと視線を送っている。
よく見れば、他に集まった女性ドクターたちは、もっと激しく彼をガン見している。


そんな視線を気にする様子もなく、主役の彼はフッと顔を上げた。
そして、音頭を取るドクターに目を向ける。
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