イジワル外科医の熱愛ロマンス
「懐かしい……じゃ……」


途切れ途切れの掠れた声が耳をくすぐった。
私の独り言が聞こえたのか、それに祐がなにか返してきたのだとわかる。


私はそっと目を開けた。
そして。


「っ、え……?」


一瞬ギクッとして、強張った声を漏らした。
隣のシートに深く身を沈めていた祐が上体を起こし、私の方に身を捩っていた。
彼からは遠い方の肘掛に手を突き、私をシートに囲い込むように乗り出してくる。


「ゆ、祐?」


彼と同じように身を沈め、頭までシートに預けていた私は、それ以上後ろには下がれない。
なのに祐は、私との間隔を詰めてくる。


「どうせするなら、とことん警戒しろって言ったろ」

「え? あの……」

「俺の隣で目を閉じるとか。油断したお前が悪い」


祐はそんな一言を呟き、私が頭を預ける背もたれに、肘から下をピッタリとついた。
彼の腕に押された私の椅子の背もたれが、ギシッと小さな音を立てて軋む。
祐は私の瞳を真っすぐ正面から射貫いてくる。


「祐、あの……?」


怯みながらも、目を逸らすことができない。


いったいなにが起きているのか。
上手く理解できない私の視界を、祐の端正な顔が覆い尽くしていく。
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