炭酸アンチヒーロー
・「かわいいと思うけどね」
避けられてる、と気づいたのは、お弁当も食べ終わったお昼休み。
教室を出ようとした私が、ちょうど同じタイミングで廊下から室内に入ってきた辻くんと、はち合わせたときだった。
「あ……」
今確かに、視線が交わったのに。
辻くんは無言で私から目を逸らすと、何もなかったかのようにそのまま脇を通り過ぎた。
「……ッ、」
無視、された?
浮かんだ疑問に胸が軋む。そしてそのとき、昨日野球部の部室であった“あの”出来事が頭の中によみがえって。
……瞬間、唐突に理解した。
もう、自分たちは今までのような、曖昧な関係ではいられないんだってこと。