炭酸アンチヒーロー
「ふふっ。里見くん、彼女さんのこと大事にしてるんだね」

「あれ、わかっちゃったー? そうなの俺ってば、彼女のことだいすきなんだよね」



照れた素振りも見せずに、里見くんはおどけた様子でそんなことを言う。

恋人からこんなふうに想ってもらってる里見くんの彼女さんはすっごくしあわせなんだろうなあ、なんて、その笑顔を見ながら思った。


だけどそう考えていたことも、次の里見くんのセリフでどこかへ飛んでしまう。



「あ、そういえば蓮見さん」

「はい?」

「あのさ、いきなり変なこと訊くんだけど……もしかして、最近ヒロと何かあったりした?」

「え」



何気ない調子で。まっすぐに私の目を見て。

思いもよらないその問いかけに、一瞬息を詰めた。

私の動揺に気づいているのかいないのか、里見くんは続ける。



「ていうか、正確には『ヒロに何かあったか心当たりある?』って感じなんだけどさー」



心臓が、いやに大きく鳴っている気がする。

無意識のうちに、私はぎゅっと、制服の胸元を握りしめていた。



「アイツ、なんか最近、ぼんやりしてること多くて。部活中はさすがにそうでもないけど」

「……そう、なんだ」

「うん。で、“同じクラスの蓮見さん”は、何か知らないかなあって」
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