炭酸アンチヒーロー
先に視線を逸らしたのは、私。

彼の足元を見つめながら、何でもないみたいに小さく笑ってみせた。



「えっと、ごめんね。……私はわからないや」

「んー、そっか。こっちこそごめんね、いきなりこんなこと訊いたりして」

「ううん」



私が首を横に振ったと同時に予鈴が鳴り響き、里見くんと別れる。

教室へと足早に向かう途中、なんだか無性に泣き出したくなりながら。

両手を強く握りしめたまま、ただひたすらに、廊下を進んだ。


……私は今、どうしてこんなにも悲しいのか。

今はまだ、知りたくなくて。
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